2008年UG report

2008/1/13 ごめんと言えなくて。。


日本でもおなじみの名投手、あの“ロケット”ことロジャー・クレメンス投手(45歳)の信頼と実績が大きく揺らいでいる。

彼の元トレーナーであるブライアン・マクナミー氏が、昨年12月の“ミッチェルリポート”(メジャーリーガーのステロイド実態調査)でクレメンスの禁止薬物使用を証言したことがアメリカで大きな波紋を呼んでいるのだ。

マクナミー氏が証言した主な内容は、1998年から2001年まで、クレメンス投手にステロイドやヒト成長ホルモン(HGH)を臀部に16回注射を行ったという、生々しいものであった。 
クレメンス投手はその疑惑を真っ向から否定するキャンペーンを行っているのだが、同じくレポートに実名を挙げられたクレメンスの親友であるアンディー・ぺティット投手がすぐに使用を認め謝罪を行ったことが、クレメンス投手の疑惑を更に深めている。

この事態を重く見た政府は、ステロイドをやった、やらない、嘘を言った、言わないで大紛糾しているこの件について2008年2月13日に公聴会を開くことを発表した。
公聴会では、マクナミー元トレーナー、クレメンス、そしてぺティットも呼ばれ、生々しい壮絶なバトルが繰り広げられることが予想されている。

クレメンス投手が、ステロイドやHGHを実際に使用したかどうかを確証する証拠はもちろんどこにもない。 
今後もおそらく出てくることはないだろう。 
だが、この文章を読んでいる大半の方と同様(?)、私はクレメンス投手は限りなく“黒”に近いと勘繰っている。

だが、クレメンスのステロイド使用を擁護するわけではないが、クレメンス投手もある意味、時代の流れに呑み込まれた被害者の一人だと私は感じている。

そもそも、メジャーリーグでステロイドが規制薬物として検査されだしたのは2003年からで、使用に罰則が設けられたのが2004年からと、つい最近の出来事なのだ。
それまでもリーグでの蔓延が噂されていたが、リーグも特別に規制を設けなかった。

もしかすると、クレメンス投手も”みんなが使って成果を収めているのなら俺も使ってみるか”と錯覚を起こし軽い気持ちで始めてしまったのかもしれない。

スポーツを生業とするアスリートならば、心のどこかでライバルに差をつける“ポパイのほうれん草”のようなものを探し求めているものだ。 
ましてや、それがサプリメント大国アメリカならばその思いはなおさらのことだろう。 

“アンチエイジング”、“セレブ御用達”という謳い文句でヒト成長ホルモン(HGH)の錠剤を売り込むフリーメールが、バイアグラのセールスと同じ感覚で私のメールアカウントに毎日のように届く。 
これがアメリカの薬社会の現状なのである。
だれでも簡単に、そして気軽にパフォーマンス向上剤を手に入れることが出来る社会なのだ。
そこに罪の意識など、殆ど無いと言ってもいいだろう。

アメリカの世論が今、クレメンスに求めていることはモラルの善悪よりむしろ、親友のぺティット投手やその他の実名を挙げられた数多くの選手のように、使用したことの非を認め、素直に謝るという品格ある振る舞いなのではないだろうか?
それが、彼に憧れている子供たちに出来る最大限のことだと思う。

だが、これだけ大々的に使用していないというキャンペーンをした以上、クレメンスにもう引くに引けない状況になっているのかもしれない。
このままでは、法廷偽証罪という新たな疑惑もかけられ、ますます泥沼にはまっていくことが懸念される。

私自身も、クレメンスが投げた試合を何度も実況し、そして興奮したファンの一人である。
歴代8位の354勝をあげた稀代の名投手、ロジャー・クレメンスが、このまま白黒つかないまま引退し球界から姿を消していくことだけは避けてほしいと心から願っている。